ラ・リーガの再開初戦で、久保建英が魅せた。
日本時間の6月14日早朝に行われたマジョルカ対バルセロナ戦で、久保はスタメンに名を連ねた。新型コロナウイルスの感染拡大による中断前を含めると、4試合連続の先発となる。
降格圏の18位に沈むマジョルカは、首位を走るバルサに0-4で敗れた。彼我の実力差が浮き彫りになったなかで、19歳になったばかりの日本人MFははっきりとした存在感を示す。4-4-2の2列目右サイドで起用され、バルサ守備陣に脅威を与えた。
22分にカットインからフィニッシュへ持ち込んだ一撃は、相手GKマルク・アンドレ・テア・シュテゲンの好セーブに阻まれた。32分にはゴール正面やや右からの直接FKを任される。5枚のカベの左端をすり抜けた低い弾道の一撃GKは、テア・シュテゲンの正面を突いたもののキャッチングを許さない威力があった。
マジョルカが散発的に繰り出すアタックは、「TAKE」抜きでは成り立たないものだった。
3カ月以上ぶりの実戦となったバルサ戦で、久保はなぜ現地メディアも絶賛するパフォーマンスを披露できたのか。バルサの下部組織に在籍していた当時から彼を知り、その成長プロセスに間近で接してきた中西哲生氏に聞く。
かつて名古屋グランパスと川崎フロンターレでプレーした同氏は、現在も久保と定期的に連絡を取り合い、技術からメンタルまで幅広く助言をしている。
もはや換えの利かない選手になった。
プレーのクオリティが高まってきており、取り換えの利かない選手になった──。というのが再開初戦のバルサ戦を観た率直な感想です。
具体的なパフォーマンスへ触れる前に、時計の針を少し巻き戻してみましょう。
昨年8月のシーズン開幕を、久保は控え選手のひとりで迎えました。9月、10月、11月と日本代表やU-22日本代表に招集されながら試合に絡み続け、11月上旬から8試合連続で先発します。
しかし1月中旬に立場が変わり、5試合連続で先発から外れました。
普通なら冷静さを失ってもおかしくない。
スタメンに選ばれないのは、選手にとってネガティブな状況です。ましてや先発に定着したタイミングがあったのなら、冷静さを失ってもおかしくない。一方で、選手起用は監督の専権事項です。選手からすると「自分の力が及ばない領域」であり、それならば、「なぜ先発で使ってくれないのか」と不満を抱くよりも、「どうすれば自分は出られるのか」にフォーカスしたほうがいい。
果たして、今シーズンの久保はつねにポジティブ思考です。先発で使われない局面でも、つねに自分と真正面から向き合ってきました。
それも当然かもしれません。
小学生でバルサのカンテラに入り、帰国後はFC東京の下部組織からトップチームでプレーし、横浜F・マリノスへの期限付き移籍も経験した。クラブと並行して様々なカテゴリーの日本代表にも招集されてきた。
6月4日に19歳になったばかりですが、すでに相当数の監督のもとでプレーしてきたわけです。スタメンで起用されない経験もしてきた。そうした日々を過ごすことで、「いま自分が置かれている立場で、監督から何を求められているのか」を、客観的に分析する能力が身についていったのだと思います。
今回の久保と同じ立場になったら……。
新型コロナウイルスの感染拡大による中断前は、3試合連続で先発していました。中断前最後のエイバル戦では、リーグ3点目も決めていた。調子が上向いてきたなかで中断された悔しさがあり、ようやく迎えた再開初戦がバルサ戦です。彼にとっては気持ちのたかぶる要素が重なっていたのですが、感情を波立たせることはないのです。
バルサ相手だからという気負いを感じさせず、久保は現時点の自分を素直に表現していました。申し分のない精神状態で試合に入り、そのままのメンタルで最後までプレーしたことを、まずは評価するべきでしょう。
決定的なチャンスに力まない精神。
前半20分過ぎには、右サイドからカットインして決定的なシュートを放ちました。バルサの守備陣を慌てさせたこの場面では、「力んでいない」ことに触れるべきでしょう。決定的なシュートシーンで「決めてやる」といった感情が先立つと、フォームが崩れてしまいます。久保とは以前から「決めたいと思うと、決まるフォームにはならない」と話しているのですが、左足でインパクトをした瞬間の姿には、「決めてやる」といった感情が浮かんでいなかった。つまりは「力みがなかった」ということです。
「決めてやる」という気持ちはもちろんあるけれど、気持ち先行にならない、気持ちに身体が縛られない、ということです。
それでも得点に至らなかったのは、シュートコースがイメージどおりではなかったから。あと少しだけ高さがあれば、テア・シュテゲンに防がれることはなかったでしょう。
マジョルカでの居場所を確実にした。
30分過ぎには直接FKからゴールを狙いました。この試合最初の直接FKです。中断前ならサルバ・セビージャが蹴っていたに違いない場面で、36歳のベテランがキッカーを譲った。そこに私は、中断期間中に久保がつかんだ信頼の深さを読み取りました。ビセンテ・モレノ監督とチームメイトは、彼が蹴ることに納得していたわけです。無回転のストレート系を選択したシュートは、カベをすり抜けたもののGKの正面を突きました。ここでは得点に結びつかなかったですが、キックのバリエーションもクオリティも備えています。このままキッカーを任されていけば、直接FKからのゴールも近い将来に見られるかもしれません。
他国のリーグ戦と同じくラ・リーガも、再開後は選手交代が5人まで認められています。そのなかで、久保はフル出場しました。中断期間を経て序列の変わったポジションもあるなかで先発を譲らず、最後までピッチに立ったのです。
マジョルカというチームでどうやって特徴を出していくのかについて、久保は答えに近づいていると感じます。
numberweb
確かに完璧にチームの中心だった、これで結果を残していけば、更に来シーズンの道が開ける、どこのチームに行ったとしてもだ。