ハーフウェイライン付近からドリブルを開始しながら、RCDマジョルカのMF久保建英は何度も逆サイドへ視線を送った。左側をフォローしてくる味方はいない。ならば、自らフィニッシュに持ち込むしかない。ペナルティーエリア内の右へ侵入したところで、利き足とは逆の右足を振り抜いた。
観客のいないホーム、エスタディ・デ・ソン・モイシュにレバンテUDを迎え、日本時間10日未明にキックオフされたラ・リーガ1部第35節。奇跡の残留を目指す18位のマジョルカが1-0でリードしたまま迎えた後半39分に、眩い輝きを放った久保が満開の笑顔を弾けさせた。
久保が放った強烈な一撃は、横っ飛びしたレバンテのGKアイトール・フェルナンデスのビッグセーブに阻まれた。しかし、こぼれ球を味方が必死につなぎ、今度は真正面からMFサルヴァ・セビージャがシュート。再びフェルナンデスが防ぎ、追加点を奪うチャンスは潰えたかに思われた。
次の瞬間、まるで気配を消すように右サイドからゴール前へ侵入してきた久保が、相手選手たちの間に割って入って左足をこぼれ球にヒットさせる。8試合ぶりに、新型コロナウイルスによる中断から再開された後では初めて決めた今シーズンの4ゴール目。ビセンテ・モレーノ監督ら首脳陣が狂喜乱舞するベンチ前へ駆けていった久保は、ペコリとお辞儀をした後にもみくちゃにされた。
11試合連続で先発した久保は、お役御免とばかりに直後にベンチへ下がった。数分後に見届けた9勝目とともにマジョルカは勝ち点を32に伸ばし、日本時間11日未明にレアル・マドリード戦を控える、残留圏の17位につけるアラベスに勝ち点で3ポイント差に肉迫した。新型コロナウイルスによる長期中断を余儀なくされた今シーズンも残り3試合となった。12日のセビージャFC戦、15日のグラナダCF戦、19日のオサスナ戦で1年目の戦いを終え、マジョルカとの契約も満了するなかで、4ゴール4アシストをマークしている久保の去就が大きな注目を集めている。
昨年6月にFC東京からレアル・マドリードへ電撃移籍した久保は、3部リーグにあたるセグンダ・ディビシオンBに所属するリザーブチーム、レアル・マドリード・カスティージャではなくラ・リーガ1部でのプレーを希望。開幕直後の昨年8月にマジョルカへ期限付き移籍した。
今年に入ってからは途中出場が続いた時期もあったが、6試合ぶりに先発し、フル出場した2月21日のレアル・ベティス戦で2点目をマーク。続くヘタフェCF戦とエイバル戦でも先発し、後者では2点目をマークするなど、中盤の右サイドで存在感を放ち始めた直後にリーグ戦が中断に入った。
この時点でドリブルを仕掛けた回数と相手選手からファウルを受けた数で、久保はラ・リーガ1部全体のトップ10に名前を連ねていた。降格圏にあえぐマジョルカの攻撃陣をけん引していた証となる数字は、再開された後も先発出場を続けてきたなかでさらにはね上がっている。
スポーツのデータ分析で知られるOptaの日本語版公式ツイッター(@OptaJiro)は7日に、直近のラ・リーガ1部の10試合におけるドリブル回数のランキングを公表。102回で1位になったアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(FCバルセロナ)に次いで、64回の久保が2位につけた。
さらにドリブル成功回数でも56回のメッシに次ぐ31回をマーク。再開後に対戦したバルセロナ、レアル・マドリード、アトレチコ・マドリード相手にチームは敗れたものの、久保個人はハイレベルなドリブル突破を何度も披露。同時にヨーロッパ各国のクラブから大きな関心を寄せられ始めた。
新天地候補として報じられたクラブは実に30に達する。昨夏も獲得に乗り出したリーグ・アンのパリ・サンジェルマンをはじめ、セリエAのACミランやプレミアリーグのアーセナル、ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントが含まれるなかで、久保にとってベストのシナリオは何なのか。
例えばパリ・サンジェルマンは、完全移籍での獲得を希望しているとされる。ただ、レアル・マドリードは久保の違約金を、2億5000万ユーロ(約303億円)に設定している。他のクラブが手を出せない金額には、完全移籍のオファーには応じないというクラブ方針が反映されている。久保自身も名門レアル・マドリードで、レギュラーとして活躍する自身の姿を短期的な目標に掲げている。中断期間中に応じたスペインメディアのインタビューに対して、久保はこんな言葉を残している。
「僕の夢ははっきりしています。白いユニフォームを着て(サンティアゴ・)ベルナベウでプレーするためにいま、マジョルカでいろいろなことを学んでいる。すべては自分次第ですけど、マドリードに居場所はあると思う。素晴らしい選手になって、マドリードで大きなことを成し遂げたい」規定路線として中断前から報じられてきたのは、今シーズンに続く期限付き移籍で武者修行を積ませるプランだ。この場合、レアル・マドリードは同じラ・リーガ1部で、残留争いを強いられているマジョルカよりもレベルが上がるクラブを、久保の成長を後押しする新天地として検討している。
その中で有力候補として何度も名前があがっているのがレアル・ソシエダだ。今シーズンはレアル・マドリードから期限付き移籍している21歳のノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴールが、一時はチームを暫定首位に押し上げる大活躍を演じるなど、クラブ間でも良好な関係が築かれている。
レアル・ソシエダは8日の時点で勝ち点51ポイントの7位につけ、来シーズンのUEFAヨーロッパリーグへの出場権を得られる6位のヘタフェを2ポイント差で追っている。ラ・リーガ1部だけでなくヨーロッパの舞台での戦いも加わってくれば、経験が増える分だけ成長も加速される。マジョルカで一気に存在感を増した背景として、流暢なスペイン語を駆使できる久保のコミュニケーション能力を抜きには語れない。英語も操る久保だが、バルセロナの下部組織時代に身につけたスペイン語はネイティブレベルにあるだけに、ラ・リーガ1部で挑戦を継続させる意義も大きい。
一方で最近の活躍ぶりから、レアル・マドリードへの復帰を望む声も上がり始めた。これは各クラブに「3」が設定されている、EU(ヨーロッパ連合)圏外枠とも密接に関係している。
今シーズンのレアル・マドリードは、そろってブラジル代表に名前を連ねる22歳のDFエデル・ミリトン、19歳のFWヴィニシウス・ジュニオール、同じく19歳のFWロドリゴ・ゴエスにEU圏外枠を使っている。このうちヴィニシウスが、近くスペイン国籍を取得する見通しだと報じられた。
要はEU圏外枠がひとつ空くわけで、その場合にはラ・リーガ1部に十分に適応している久保か、あるいは今年1月に鳴り物入りでフラメンゴから加入し、今現在はレアル・マドリード・カスティージャでプレーしているブラジルの新星、18歳のMFレイニエルを候補にするべきだ、というものだ。来シーズンに臨む陣容のなかに久保の名前があがる状況は、イコール、マジョルカで描いてきた軌跡が高く評価されていることを意味する。ただ、実際に復帰を果たしたとしてもレアル・マドリードのただでさえ厚く、夏の移籍市場でも補強するはずの選手層が久保の前に立ちはだかってくる。
先月に19歳になったばかりの年齢を考えても、可能な限り多くピッチに立ち、経験を積み重ねていく方が遠回りに見えて、その実はレアル・マドリードに居場所を築くための近道になる。その意味では期限付き移籍を継続することが、現時点におけるベストのシナリオとなる。新天地候補のレアル・ソシエダは日本時間11日未明に、ホームにグラナダを迎えてラ・リーガ1部第35節を戦う。勝てばヘタフェを抜いて6位に浮上し、週明けの第36節で直接対決が組まれている5位のビジャレアルにも勝ち点3ポイント差に肉迫する。
マジョルカの1部残留に全身全霊をかけている久保本人は、もちろんレアル・ソシエダの動向など気に留めていないだろう。それでも来シーズンの自身の去就にも影響を与えかねないカードを含めて、久保が初めて挑んできたラ・リーガ1部がいよいよクライマックスを迎える。
yahoo
本当に凄いな!!、チームメートに認められさえすればどこのチームでもやっていける中心で出来れば、CLで久保建英を見たいから、チャンピョンズリーグに出れるチームに言って欲しい。レアルマドリードでもいいんだけども中心は厳しいのかな来期は。
本音はバルセロナで見たかった。メッシと久保建英一回でもいいから見たかった。