悲しいほど「心が弱い人」に共通する3つの特徴 朝倉未来
東洋経済

時には命も危険にさらす、過酷な総合格闘技の世界。その第一線で活躍し続けるには、常人にはない「強者」のマインドが必要です。
若くしてRIZINで7戦全勝という成績を収め、昨年開始したYouTuber活動では1年で登録者数100万人を突破。今年2月には初の著書『強者の流儀』を上梓した総合格闘家・朝倉未来さんが、自分の経験をもとに、誰にでも共通する「弱さ」の克服方法について語ってくれます。
プロの格闘家として活動していると、「どうしたらそんなに強くなれるのか」とよくたずねられます。ところが僕の場合、聞かれているのはどうも格闘技における「強さ」の身に付け方ではない、とよく感じます。

むしろ「弱さ」を克服して自信をつけたい、他人に「弱い」人だと思われたくない、人に流されたくない、というような、万人に共通する悩みをどうやって解消したらいいかを、みなさんが知りたがっているという印象を受けました。

僕自身も、もともとの性格は飽きっぽくて意志が弱く、1つのことをやり通せるような「強い」人間ではなかったので、そういう悩みにはとても共感します。

今回は、少年院を出てから総合格闘家を目指し始めてからの10年間、強くあるために日々試行錯誤を重ねていく中で見いだした、「弱い」人に共通する3つの特徴についてお伝えできればと思います。

弱者は「自分の感情に振り回される」
「弱さ」とは、力や能力で他人に劣ることだけではありません。自分の感情に負けてしまうことも、「弱さ」の1つです。

すぐに動揺したり、何かにつけて失敗を他人のせいにしてしまう人は、いかにも弱い人に見えますよね。例えば僕の場合ですが、YouTubeの収録のためにわざわざ集まったのに、共演者の都合で撮影がなくなってしまったことがあります。こういうときは、他人を責めたり不平不満を漏らしたりと、ネガティブな感情にとらわれてしまいがちです。

ここでイライラにのまれずに、頭をさっと切り替えられるかどうかが重要です。いったん冷静になって状況をポジティブに捉え直せば、「せっかく集まったのだし、今できるほかの撮影をやってみよう」と、時間と機会を有効活用するアイデアを提案できるかもしれません。

ちょっとしたことに感じるかもしれませんが、日常的に発生するこうした小さいトラブルもチリも積もれば山になります。こういうネガティブ要素をいかにポジティブに「修復」できるかが、弱者から強者に変わるためのポイントの1つなんです。

ネガティブな感情から距離をとる「修復力」を身に付けるためには、自分自身を1歩引いた視点から眺める「客観視」が必要不可欠。そして客観的な視点は、勝負事で強さを発揮するうえでも大事なものです。

格闘技に限らず、勝負や競争には必ず相手がいます。「客観視」ができないと、自分の強みの過信や、逆に弱点の軽視などによって、必ず足をすくわれてしまいます。

「客観視」ができなければ、勝負に勝ちきれない
僕が「客観視」を意識するようになったのは小学生のころです。あるとき両親がビデオカメラを買ってきて、僕の動きを撮影してくれました。そして、そこに映っていた自分の動きを観て衝撃を受けます。想像していた自分の動きと、画面に映る等身大の自分の動きが、まったく一致していなかったんです。

自分でうまくできているつもりでも、実際にはできていないことがたくさんある。そのことに気づいた僕は、ビデオで自分を撮影することにハマり、あらゆる動作を自分で検証するようになりました。そして、思い込みと現実のギャップを埋めることで、自分の弱みを潰し、新たな強みを身に付けることができるようになりました。この徹底した「客観視」の訓練が、後の格闘技生活に大きく役立ちます。

逆に言えば「弱い」人というのは、自分のしたい動きだけをしてしまう人、自分のイメージどおりに物事が進むと思い込んでいる人のことだと言えるでしょう。

そういう人は、実戦の場で自分の思うように事が運ばないときに、なぜうまくいかないのかを理解できません。自分の予想と異なる動きをする相手が現れたときに、翻弄されるままになってしまうのです。

「客観視」の実践の仕方としては、第三者に意見を求めたり、他人のよい部分を観察することが有効でしょう。

RIZINでリオン武選手と対戦したときのことです。僕は動体視力に自信があるので、相手の攻撃をもろに受けることはあまりありません。しかし彼のパンチは特殊な打ち方で、うまく避けきれませんでした。「これはすごい技だ」と感じ、すぐに研究を開始。次の試合のときには、技のレパートリーに加わっていました。自分にないものに出会ったら、とにかくすぐに試してみる。その積み重ねで、視野も広がっていきます。

また、視点をずらす客観視の考え方は、戦う相手を分析するときにも応用できます。通常の客観視は、「自分の主観から離れて、第三者の視点からビデオカメラのように自分を眺める」ことです。他人を分析するときにはその反対に、「第三者の視点から見た風景を、自分の主観に置き換えて再現する」操作をします。僕はこれを、「空間的想像」と呼んでいます。

格闘技の試合を例に挙げましょう。例えば、試合相手の分析をするために、その相手の過去の試合映像を可能な限りたくさん観ます。映像には、2人の選手が並んで戦うところが映っていますが、実際の試合では、自分の視界に映るのは相手だけです。このギャップを埋めるためには、撮影された映像を観るときに「自分の視点からだとどう見えるか」をシミュレーションする必要があるのです。

「空間的想像」で入念に対戦映像を分析すると、攻撃の軌道や回避の癖など、外から観ているだけではわからない相手の細かな動きが、だんだん具体的に見えてきます。

「弱い」人は相手を分析しようとしても、ただ映像を漫然と見てしまうことが多い。自分ならどうするか、自分の視界からはどう見えるか。それをつねにシミュレーションすることで、臨機応変に対応できる「強さ」が生まれるのです。

目的意識が曖昧だと、準備や練習も非効率的に
これは、格闘技に限らず、多くの物事に共通する問題でしょう。

多忙なビジネスパーソンならみなさん同じ境遇だと思いますが、僕も試合や練習だけに時間を使えるわけではありません。インストラクターとしての仕事や取材対応などもありますし、最近始めたYouTubeもチャンネル開設1年で登録者数100万人を超えるほどに本気で打ち込んでいます。睡眠時間も平均7時間は確保しているため、必然的に練習や準備の時間は限られます。

そうなると、「練習」は短い時間で効率的に行わなければなりません。そのためには、やはり「実戦」をつねに想定することが大切なのです。

僕は2時間の練習時間をどれだけ有効に使うかを考えた結果、「総合格闘技の試合で勝利することに直接結びつかない練習」はしないことにしています。具体的には、ウェイトトレーニングやランニングなどは行わず、ひたすら実戦形式のスパーリングや、レスリングなどの新しい技の習得に時間を割いています。

基礎練習は大事、と思う方もいるかもしれませんが、実際の勝利に貢献しているとは限りません。ウェイトトレーニングやランニングで身体に負荷をかけて「練習をした気になった」としても、試合で勝てなければ無意味なんです。

これは社会人と英語力の関係に似ているかもしれません。「これからの時代英語は基礎教養」とずっと言われていますが、具体的に使う機会がなければ成果が出にくいでしょう。また日本人は、テストの点数はよく取れるのに会話はぜんぜんできないという状況になりがちです。趣味ならそれでもいいでしょうが、忙しいビジネスパーソンがそんな悠長な態度ではいられないですよね。

結局、何かを達成したいとか、何かを克服したいというような、明確な目的意識が大切なんです。目的さえはっきりすれば、自動的にやるべきことも明確になりますから、コミットすることができます。そして、コミットしているからこそ、短時間でも集中して質の高い準備ができるんです。

逆に言うと、目的意識が曖昧なのは「弱さ」です。やっていることに自信がないため、練習メニューもちゃらんぽらんになりがち。そうすると質も効率も落ち、成果が出ないから心身ともに疲弊してしまいます。こういう状態に心当たりはありませんか?

目的意識をしっかり持つために大切なのは、今取り組んでいることが本当にやりたいことなのかどうかの再確認です。結局、本当にやりたいことでなければ全力をぶつけることはできないでしょう。

そして、取り組んでいることが本当にやりたいことであれば、どんどん成長することができます。やりたいことではないのになんとなくやめることができず、ずるずると続けてしまう、というのも「弱さ」の表れです。もちろん、疲弊したときはしっかり休息をとって、モチベーションを回復させましょう。

心身ともに余裕を持ち、本当にやりたいという意欲を持って物事に取り組むこと。それができれば、「弱者」は自然と、「強者」に生まれ変わっているはずです。

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